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2009年5月12日 (火)

元気はつらつ辞任会見      田中良紹

元気はつらつ辞任会見
 与党が党首討論よりも補正予算案の衆議院通過を優先し、その後の政治日程を固めたと思われた5月11日、民主党の小沢代表が代表辞任を表明した。辞任会見を行った小沢代表の表情は元気はつらつ言葉にも力がこもっていた。辞任の理由は「政権交代のため挙党体制を確立する」の一点である。代表に身を捨ててまで「挙党態勢を確立する」と言われれば党員は誰も逆らえない。これで民主党には「かんぬき」がかけられた。

 事件は麻生内閣の支持率が一桁まで下がろうという時に起きた。小沢代表の秘書が西松建設からの献金を政治団体からの献金と偽って記載したとして逮捕された。政治資金収支報告書の虚偽記載での逮捕は前例がない。しかも政権交代が確実と言われる選挙直前の強制捜査である。これには検察OBからも批判の声が上がった。およそ民主主義国家ではあり得ない暴挙だからである。

 捜査は建設会社の違法献金問題を正すために行われたものではない。小沢代表の代表辞任を目的として行われた。複数の政治家が献金を受けていたにもかかわらず、小沢氏だけが狙われた。そして小沢氏が速やかに代表を辞任すれば秘書は起訴されなかった。家宅捜索が行われた箇所を見ると小沢氏に捜査が及ばないことを検察はサインとして送っている。検察はマスコミを使って小沢批判をやらせ、選挙前の民主党議員を動揺させれば小沢氏は辞任するとふんでいた。民主党内から辞任を求める声が上がり、小沢氏が辞任すればそれで捜査を打ち切るつもりでいた。

 ところが小沢氏が検察を批判し続投を表明したことから検察のシナリオは狂いだした。慌てて捜査員を拡充し、小沢本人をターゲットにした捜査に切り替えた。しかしそれでも収穫はない。結局起訴する積もりのない秘書を起訴せざるを得なくなった。こうなると全ては裁判で判断してもらうしかない。判決が出るまでは見守るのが民主主義の常識である。ところがこの国の新聞とテレビは、裁判が確定するまでは無罪と想定されるのに、「小沢代表は辞任すべし」の大合唱を始めた。

 さらに「説明責任を果たせ」の大合唱も起きた。検察の捜査に一点の誤りもないという前提がなければ被疑者が説明責任を求められる道理はない。説明責任は検察と小沢氏の双方にある。ところが検察側は説明を行うことを拒否した。全ては裁判で説明すると言った。それなら小沢氏も裁判前に説明をして手の内をさらす必要はない。しかしメディアは「小沢氏の説明責任は果たされたか」と国民に問い、「果たされていない」との回答を多数得て小沢氏を批判した。回答がそうなるのは当たり前である。それを材料に批判するのは民主主義を破壊する行為である。この国のメディアは戦前も戦後も何も変わってはいない事を今回の事件は明らかにした。

 国家権力の仕掛けた罠にいそいそと協力するメディアを見て、攻撃された民主党は一致団結して民主主義を守る戦いを始めるのかと思ったら、議員らは全く逆の行動に出た。「政権交代のために小沢代表の自発的辞任を求める」との声が党内から出てきた。新聞・テレビの報道に左右される、民主主義を知らない議員たちがあぶり出された。長年自民党の手の内を見てきた私の経験から言えば、彼らには「買収」と「恐喝」が仕掛けられているはずである。

 小沢代表にすれば、代表を辞任せず、これらの議員を無視して選挙に打って出ることもあり得た。それでも過半数を得て政権交代を成し遂げられたかもしれない。しかし党内対立がしこりとして残り、政権獲得後の民主党は脆弱になる。自民党から一定数を引き剥がして党勢を強化する必要が出てくる。霞ヶ関との力関係も不利になる。政権交代は選挙の結果が全てではない。政権交代後に起きる霞ヶ関との主導権争いの方が重要だ。それに勝つだけの力をつけなければ政権交代の意味はないのである。

 検察の動きを見極め、裁判の日程を考え、与党の解散戦略を見極めなければ、どのように対応するかは決められない。先に動けば不利になる。そうしたことを総合判断して小沢氏は、この日の辞任表明を決めたと思う。結論は民主党の党内結束を優先し、その結束を守って政権交代を成し遂げるという決断であった。

 早い時点で辞任をすれば事件の責任を取ったと見なされる。今回の辞任を「何で今頃」とか「事件の責任を取らないなら辞める必要はなかった」と言う人たちは、事件の責任を押しつけられなかった悔しさを表現している。小沢代表は攻撃されて辞めたのではなく、逆に辞任を攻撃材料にしようとしている。そのために与党は辞任と事件とを結びつけようと必死だ。

 政府与党はこれまで「年金未納問題」で菅直人代表を辞任追い込み、岡田幹事長に「三党合意」を飲ませることに成功した。「三党合意」は民主党に消費税導入を認めさせ、政権交代後の民主党の政策を縛る道具である。この二人は容易にコントロールされることが実証された。前原誠司代表もまた「耐震偽装問題」という絶好の追及材料を生かせず「偽メール事件」に絡め取られて辞任に追い込まれた。この三人が代表になる事は自公政権に「塩を送る」事になる。

 選挙まで時間がないのでこれまで小沢氏が構築してきた選挙態勢を引き継げる人間が新代表になるしかない。そして小沢代表は辞任しても小沢戦略は残ることになる。それで選挙に勝利すれば政権交代の第一の功労者は小沢一郎と言うことになる。そう言う一手を小沢氏は打った。大変なのは与党の側である。これまで構築してきた戦略の見直しを迫られる。とは言え大幅な見直しをする時間的余裕もない。選挙に勝つため小泉対反小泉の分裂選挙を仕組んでメディアの目を引きつけようとしたが、最近では世襲反対と世襲賛成で分裂選挙を仕組もうとしている。

 捨て身になった民主党に対しその程度の戦術でしのげるのか、悩みはむしろ麻生総理の方に出てきたと辞任会見を見ながら思った。


投稿者: 田中良紹 日時: 2009年05月12日 06:33 | パーマリンク

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